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海外にサービス残業はあるのか?(1)--アメリカで相次ぐ訴訟2014.09.22

「海外にサービス残業はあるのか?」という質問を受けることがあるので、それについて書きますが、ここではアメリカの話に限ります。「アメリカにはサービス残業なんてない」と言い切っている人もいますが、その人が働いた企業ではなかったのか、そういう企業ももちろんあるでしょうが、そうでない企業もあるわけです。

まずは、その人が、前回、紹介したExempt社員なのか、Non-Exempt社員なのかで違ってくるでしょう。Exempt社員は何時間働こうが残業代はつかわないわけですから、そもそも「サービス残業」という概念は当てはまりません。「自宅に仕事を持ち帰っている人たちもいる」と言う人がいるように、私もそういうアメリカ人は何人も知っていますが、彼らの多くはExempt社員でしょう。Exempt社員にとって、いかに成果を上げるか、仕事を終わらせるかは、勤務時間とは関係ありません。何時間働いても給与は変わらないわけですから、できるだけ短時間に効率よく働こうとするわけです。

相次ぐ訴訟

一方、残業代が払われるべきNon-Exempt社員、とくにブルーカラーやサービス職などの低スキル・低賃金職種では、規定どおり残業代が払われず、社員が雇用主を訴えるケースは、後を絶ちません。(泣き寝入りしているケースは、それ以上にあるでしょう。2009年、3大都市の低賃金労働者を調査したところ、76%が残業代を支払われていなかった、または規定以下しか支払われていなかった、2012年の西海岸の飲食店調査でも雇用主の71%が労働法規違反をしていたという結果が出ました。)

今年はじめ、数州でマクドナルドおよびFCオーナーが賃金や残業代未払い、食事や休憩の拒否などで従業員に訴えられ、一部では集団訴訟に発展しています。マクドナルド以外にも、サブウェイやダンキンドーナツなど他の飲食チェーンやウォールマートなどの小売業、その請負業者なども、よく訴えられています。

大手量販店では、私も店員から下記のような言葉を聞くことがあります。

”I’m not supposed to be here” (私は、本来ここにいるべきじゃないんです。勤務時間外の意)

“I was supposed to be out of here an hour ago.”(1時間前に退社するはずだったんです。

名ばかり管理職

アメリカでは、外食産業や小売産業で働く低賃金の従業員らが法定最低賃金をもらっていないということが今、社会問題になっているのですが、労働法規違反問題は低賃金労働者に限りません。以前、知り合いのアメリカ人女性が大手外食チェーンの店舗で飲料担当マネジャーとして勤めていました。部下などいない名ばかり管理職でしたが、Exempt扱いのため、夜勤を含む変則勤務時間で週に80時間働いても、残業代はまったくもらっていませんでした。大卒で、20年以上勤務していた50手前のベテランでしたが、年収は3万6000ドルほどでした。そして、数年前、22年働いた会社を突然、退職金もなしにレイオフされました。

ホワイトカラー職では、最近、労働省に労働法違反を指摘され、LinkedInが360人ほどの現・元社員に未払い残業代および賠償金として600万ドル近くを支払いました。その社員らの大半が営業職だったらしいのですが、労働省では、これら社員は内勤営業職と位置づけたようです。概して労働時間の長いIT業界に楔をさすのが目的だったという見方もあります。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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