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有元美津世のGet Global!

多様な英語(2) ─ ネイティブ側の問題2016.01.19

 

前回、出てきたシンガポールの大臣ですが、アメリカの大学に留学した際、英語でレポートや卒論を書くのは、まったく問題なかったものの、話し言葉では、そうは行かなかったそうです。英語を話しているのに、周りには外国語を話していると思われたと。訛りのせいではなく(いや、訛りのせいもあると思う)、しゃべっていると無意識のうちに中国語の直訳文になったり、単語を間違って発音していたり(ずっと間違って発音していたことに気づいていなかったそう)、唯一、理解してくれたのは他のシンガポール人留学生だったということです。

 

この状況は、大臣のいう「標準英語を話そう」というのとは、ちょっと違います。アメリカでやって行くにはアメリカ英語を話すしかないです。SinglishやManglishはアメリカでは通用しないです。 

文法・用法の問題だけでなく、アメリカ人には相手に少しでも訛りがあると聞き取れない人たちが結構います。イギリス訛りですら聞き取れない人も珍しくありません。

 

イギリス英語圏の人たちも、アメリカに住む間に大半はアメリカ訛りに変えるのですが、ニュージーランド人の知り合いは「アメリカに何年住んでもKiwi訛りを堅持する!」と宣言していました。

それで、彼は在米20年でも、コテコテのKiwi(ニュージーランド)訛りだったのですが。ある日、電話番号案内に電話して、Richardsonという人の電話番号を調べてもらおうとしたところ、”Richardson”が通じず、四苦八苦。何度、発音しても通じないので、”R of Richardson”とスペルアウトしたところ、”Oh, R of Richardson!”と通じたそうです。(ジョークのような本当の話。)

英語ネイティブですら、こんな苦労をしているのですから、「日本語訛りで英語が通じない」といって落ち込むことはないのです。

 

在米パキスタン人の友人も、「ニュージーランドに遊びに行ったとき、初めて聞き直されなかった。アメリカでは、いつも聞き直されて言い直さないと理解してもらえない」と言います。彼女は確かに訛りは強いですが、長年、州政府に勤務しており、いつもアメリカ人に聞き直されていたとは驚きでした。とくに彼女のお姉さんの方は、多少の訛りはあるものの、非常にはっきりした発音で、彼女の英語が聞き取れなかったら、どんな訛りも聞き取れないのではないかと思うくらいです。

 

数年前、シンガポールでレストランの予約をする際、連れのアメリカ人が電話したのですが、途中で「何、言ってるかわからないから代わって」と言われて代わったところ、「席は店内にするか外にするか」という簡単な質問でした。インド訛りも、彼より私の方が理解できます。

 

Language Chauvinism(言語優越主義)

 

私のビジネススクール時代の同級生のアメリカ人女性がシンガポール人と結婚してシンガポールに移住したのですが、「シンガポールでは街で英語が通じない」と言って、数ヶ月でアメリカに戻りました。

 

マレーシアや香港に比べたら、シンガポールは店員などでも英語が話せない人は、あまりいないと思うのですが、アメリカから出たことのないアメリカ人には、シンガポールの英語は訛りのせいで英語に聞こえなかったのかもしれません。(私は、上記の大臣の英語がアメリカ人に通じなかったのも、訛りが大きいと思う。)

 

アメリカで生きていくにはSinglishでは無理であり、在米シンガポール人も米語をしゃべるようになります。同様に、アメリカ人がシンガポールで生きていくには、現地の英語や言語を学ぶべきでしょう。

 

実際に、アメリカ国内では「移民が英語を話さない」とぼやき、海外に行くと「この国の奴らは英語を話さない」と愚痴るアメリカ人は少なくありません。英語がlingua francaだからといって、「外国語を学ぶ必要はない」「正しいのは自分たちの英語だけ」「英語を話せない人は無能」と思っている英語ネイティブの姿勢も問題です。

 

マレーシア人医師が学会に出席した際、「一番わかりにくい英語を話したのは英語ネイティブ。早口で発音を短縮するし、イディオムを使いまくるし」と言っていました。「英語ネイティブでない職員が多い国際機関では、誤解が生じないよう、わかりやすい英語を話すことが鍵」という国際機関勤務の日本人もいます。

大事なのは意思の疎通であり、ネイティブかどうかにかかわらず、相手にわかりやすい形で伝えられる人がコミュニケーション力のある人といえるでしょう。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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