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有元美津世のGet Global!

文法がなんぼのものか?!─ Manglishの億万長者2016.02.23

 

あつかましい」といえば、マンションを借りた際の大家さん側の不動産業者。英語が話せない華人でしたが(マレー語もあまりできない)、クライアントにはイギリス人もいました。

 

英語で意思の疎通が図れないので、物件を見せる際には、彼女は通訳代わりに私が使っていた業者を同伴していました。その物件が見たくて、私もついて行ったのですが、物件に向かう途中で、そのイギリス人から電話がかかってくると彼女は四苦八苦。いつも、どうやって連絡を取り合っているのか???

私も、3年前、別の都市(ジョホールバール)で不動産業者(華人)とやりとりした際、口頭でもメールでも言っていることがわからないほどブロークンの英語で困りました。「○○地域にしか興味はない」と言っているのに、違う地域の物件ばかり見せるし。

 

上記の二人は、かなり強引で、それで押し切るのかもしれません。彼らの場合、大事なのは伝えたいという気持ち、というより「儲けたい」という気持ちといえるでしょうか。目的は儲けることで、ちゃんとした英語をマスターすることではないのですから。

 

もちろん、英語を話せた方が客層が広がるわけですから、「儲けたい」という気持ちが英語の上達につながれば、それに越したことはないでしょう。

 

成功に文法は必要ない

 

上記のような例は極端とはしても、ビジネスをしたり、お金を儲けるのに文法的に”正しい英語”は不可欠ではありません。

 

下記は、エアアジアのCEO、Tony Fernandesのツイートなのですが、同氏もManglishだったとは驚きです。彼の父親はインド出身。小学校はクアラルンプールのインターナショナルスクールに通い、中高はイギリスの全寮制の学校、大学はLondon School of Economicsを卒業しているので、バリバリのイギリス英語とばかり思っていたのですが…発音は「バリ」くらい。)

 

・Malaysia has lost its competitiveness due to our standards in English going down.

「英語力の低下によりマレーシアが競争力を失った」と言いたいわけですが、our standards in Englishは直訳すると「英語での我々の標準(水準)」という意味で意味を成しません。水準が下がったのではなく、一定の水準に達しないマレーシア人が増えたわけですし。Going downは、「すでに低下してしまった」(having gone down)というより「現在、低下中」ということになります。言いたかったのは、下記でしょう。

 

Malaysia has lost its competitiveness because its performance in English has declined.

 

下記は、Manglishだけでなく、非英語ネイティブによく見られる間違いです。

・Keep looking at this and thinking why doesnt Malaysian airports listen to us.

= Keep looking at this and wondering why Malaysian airports don’t listen to us.

 

Wishの誤用は、日本人の間でもよく見られます。

・Happy diwali to all that. In malaysia we are lucky to be so diverse. Wish everyone saw that.

= Hope everyone saw that.

 

ペラペラにしゃべれても書くとブロークンという人は帰国女子といわれる人たちにもいます(言語にかかわらず、しゃべれても読み書きはできないという人も珍しくないですし)。

フェルナンデス氏の英語は決してブロークンではありませんが、文法的に”正しい英語”が書けなくても、グローバルな起業家として成功し、アジア各国で多数の雇用を創出して地域経済に貢献し、億万長者(純資産5億ドル以上)になれるという例です。(億万長者の英語学者って聞いたことないし。笑)

 

同氏は、いちいちツイートする際に「英語が間違ってないだろうか」なんて気にしていないでしょう。企業経営において、そんなことは重要ではないわけですから。

 

究極的には「何のための英語なのか」ということであり、それによって重点は違ってくるでしょう。英語学者や英語教師を目指しているのでない限り、効率、投資対効果の点で細かい文法に固執するメリットは、果たしてあるのか?! と皆さんが、今一度、考える機会になれば幸いです。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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