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有元美津世のGet Global!

インド ― ギャップとカオスの国?2018.04.24


 先日、インドは「ギャップとカオスでできている」という記事を読みました。インドにはピッタリの表現ではないでしょうか。

  ニューデリーの空港に着くと、まず2010年に新設されたターミナル3の立派なことに驚きます。大半のアメリカの空港よりきれいです。

 そして、空港から市中に向かう街並みも非常にきれいで、高層ビルや国際ブランドのホテルが立ち並びます。しかし、いったん市内に入れば、やはりインド。とくにOld Delhiでは、皆が想像するようなカオスが待っています。カオスに関しては、インド人もが”Crazyな町”と呼ぶVaranasiの方が格段上ですが。  

 しかし、一番ビックリした光景は真夜中の駅でした。夜中の2時、駅のプラットフォームは寝ている人たちで埋め尽くされるのです。インドの列車は、とくに冬は霧のせいで何時間も遅れるのですが(線路の分岐を手動でやるからだそう)、それを待つ乗客たちが毛布を敷いて好き勝手に、そこら中で寝るのです。だから、プラットフォームの歩きにくいこと!

 このモダンとカオスのギャップ(コントラスト)が、インドの面白いところでもあるでしょう。

貧富の差


 また、インドは、貧富の差(ギャップ)が激しい国でもあります。富全体の80%を人口の10%、58%を1%が所有していると言われています。先進国で一番貧富の差が激しいアメリカでは、上位1%が所有している富は全体の40%以下です。

 インドには、純資産が100万米ドル以上のミリオネアは30万人以上おり、世界9位で、純資産10億ドルのビリオネア数(119人)では、アメリカと中国に次ぎ、世界3位です。

 一方、人口の約60%は一日300円以下、20%は200円以下で生活するというえげつない格差が存在します。大都市では観光客向けにスラム街ツアーもありますが、列車の窓からも各地でスラム街が見られます。

スマホはあってもトイレはない


 スラムでは、当然、家にトイレなどありません。地方でも、トイレのない家庭が多いです。

 昨年、”Toilet, A Love Story”というボリウッド映画が封切られました。結婚相手の家にトイレがないことに怒った妻が離婚裁判を起こし、離婚を避けるために夫が父親を説得してトイレを作るというストーリーです。これは実話に基づいており、実際にはトイレを作ってもらって夫の家に戻った女性もいる一方、離婚を勝ち取った女性もいます。

 インドでは、自宅にトイレがない人が5億人とも7億人とも言われ、絶対数では世界一です。地方では学校にトイレがないことも問題になっており、トイレがない学校の割合は、インド全体では18%ですが、50%以上、70%以上という州もあります。

 私がインド滞在中にも、地方では「学校にトイレがなくて女子が困っている」といった新聞記事を読みました。野外に用を足しに行こうとすると、男子にのぞかれたり、からかわれたりするので、用を足さなくていいよう朝食は食べず、学校にいる間も水は一切飲まない女子が多いというのです。登校拒否になり、中退してしまう女子生徒も少なくなく、トイレのないことが女子が教育を受ける機会を奪う要因ともなっているのです。

 数年前、「インドではトイレ所有者よりスマホ所有者の方が多い」というニュースが世界に衝撃を与えました。「スマホはあってもトイレがない人がいる」というのがインドの”ギャップ社会”を物語っていると言えるかもしれません。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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