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有元美津世のGet Global!

海外就職を目指すなら現地ニュースは不可欠2018.08.28


 6月、ベトナム各地で、政府の外国企業誘致策に対する抗議デモが起こりましたが、これについては、日本ではあまり報道されなかったようです。

 デモ参加者には「Khong Trung Quoc(No China)」「中国には一日たりとも土地を貸さない」というプラカードを掲げる人たちもおり、ベトナムや海外メディアでは「反中デモ」と報道されました。しかし、正確には、特別経済区を設け、外国企業(大半が中国企業になると思われる)に99年の土地租借権を与えるベトナム国会の法案に対し抗議するものでした。

 100人以上のデモ参加者が警察に拘留される中、ホーチミンでデモに参加したベトナム系アメリカ人の大学院生も暴力的に拘留された後、国営テレビで(強要されて)謝罪する模様がアメリカで報道されました。(米政府による越政府への働きかけ後、同学生は1か月後に釈放され、国外退去。)

日本人にも無関係ではない

 

 今回のデモを前に、在越日本大使館や領事館は「SNSでデモへの参加が喚起されているので不要な外出は避けるように」というアラートを在留邦人に対して送付したようです。

 というのも、2014年に、南シナ海での中国による油田採掘活動に対して大規模な反中デモが起こった際、外国企業の工場などが標的となり、100人以上の死傷者が出たからでしょう。

 多くのベトナム人にとっては、中国人と日本人は区別がつきません。「ベトナムの反中感情は日本人には関係ない」とはいかないのです。

 数年前、マレーシア滞在中にマレー系による政権支持(反華人)デモが行われた際も、「華人と間違えられるかもしれないから、明日は外出しない方がいい」と地元の華人に忠告されました。

高まる反中感情


 ベトナムのビーチタウン、ニャチャンでは、中国人観光客が急増しているのですが、今年5月、当地を訪れた中国人観光客グループが九段線を描いたTシャツを着て入国したことで、大騒ぎとなりました。*  それまでにも、中国人観光客に対し無免許で中国人がガイドをしたり、誤ったベトナムの歴史認識(中国の歴史観)を流布したりなどのトラブルが増えていたところに、今回の事件があり、6月にはニャチャンでも土地租借権に対し反中的なデモが起こったのは不思議ではないでしょう。

 紀元前から中国に何度も侵略され、1979年には中越戦争を戦い、その後も中国と領有問題を抱えるベトナムでは、元々、反中感情が非常に強いのです。中国からの投資を歓迎するベトナム政府ですが、抗議行動が各地に広がったことで、経済特区に関する議決を10月に先送りました。

現地のニュースを追うのは不可欠


 「日本語だけでは国際情勢はつかめない」とこれまで何度か書いてきましたが、海外で就職しようというのなら、なおさらのこと、その国の情報を追うのは不可欠です。

 たいていの国には英語メディアがありますし、現地語のニュースもネット翻訳で、粗雑な訳であっても、大まかな内容を理解することはできます。

 海外に出た後も日本語でしか情報を得ていない人たちが多数いるのですが、海外を目指す皆さんは、今すぐにでも日本語以外での情報収集を始められますよう。

 

 

* 中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張する根拠としている地図上の破線。ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイも権利を主張し中国と対立。2年前、フィリピンが国際仲裁裁判所に提訴し、九段線には法的根拠がないという判決。

なお、物議を醸した中国人観光客グループの旅行を手配した地元の旅行会社は、罰金20万円、9ヵ月の業務停止を受け、廃業。地元観光局はインバウンド旅行会社にベトナムの主権に関する法律順守を勧告。

 

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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