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有元美津世のGet Global!

ワーキングホリデーとキャリア2018.10.30


   先日、アイスランドでのWorking Holidayについて書いたところ、「(安易に行って)無駄な経験にしないように」という声をいただきましたので、ワーホリの実態について少し触れたいと思います。

あくまでも休暇


 ワーホリ経験者には、日本に戻って就職活動をした際に「日本の企業はワーホリは遊びと見なし、有意義な経験として見てくれない」という不満が結構あるようです。

 ワーホリの定義で書いたように、「休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度」であり、目的は就労や勉強ではなく、相手国の文化や生活様式を体験し、相互理解を深めることです。あくまでも、Holiday(米語ではvacation) =「休暇」なのです。

 実際、ワーホリ者が就く職種で多いのは、日本食レストランを含む飲食店での給仕、日本人観光客向けガイド、農家などでの肉体労働です。雇う側からすれば、ろくに現地語(または英語)が話せず、長くても1年しかいない短期就労者に骨幹の仕事を任せられるわけがないのですから。そうした仕事を海外で数ヵ月~1年して「私には海外就労経験があります!」と言われても… それくらいでは語学も大して上達しないし。

有意義にしたければ目的意識

  そうした単純作業がいやなら、行く前に英語力を磨くか、言葉のハンディをカバーできる専門スキルを身に付けることです。たとえば、IT系のスキルがあれば、語学ができなくても大目に見てもらえます。

 私は2年前に「オーストラリアにワーホリに行く」という20代の女性に出会ったことがあります。彼女は、観光地の旅館で仲居さんをやっていたのですが、その前は東京のレストランで2年以上調理をしていた経験があります。当時、仲居さんをやっていた理由は、ワーホリのための貯金以外に、日本食の調理を学びたいからということでした。もちろん、オーストラリアでも調理の仕事をすることを目指していました。

 彼女が働いていた旅館は、宿泊客の半数以上が外国人で、フロントに英語がしゃべれるスタッフはいましたが、室内や料理の説明は英語ではありませんでした。(つまり、旅館として英語による接客マニュアルなどは作っていない。)

 彼女は、外国人客とのやり取りは困らないくらい英語ができ、毎日、担当した宿泊客のために献立表の英語版を作成していました。たまたま彼女の担当にあたった宿泊客は、食べているものを英語で説明してもらえ、ラッキーだったのです。

 彼女にとっては余分な仕事が増えるわけですが、日本料理や食材を英語で説明するという作業を行うことで(日本にしかない食材もあるので難しい)、オーストラリアで調理を行う際にも役に立ち、彼女自身のプラスになるわけです。

 ワーホリをキャリアに役立てたいというのなら、ワーホリに発つ前から、キャリアプランニングをし、周到に準備を進めることが必要でしょう。そうでなければ、長期海外旅行、海外生活体験と割り切って、楽しめばいいのです。

 なお、 以前、紹介したMさんも、ワーホリ中は飲食店勤務だったようですが、専門スキルがあるので、ワーホリから帰国した後、問題なく自分の専門分野で仕事が見つかっています。

 

<余談>

 私自身はワーホリを経験したことはありませんが、20代の頃(ワーホリ制度に参加していない)アメリカで住み込みで子守り(nanny)をやったことがあります。9月に大学院への入学が決まっていて、学校が始まる前の3ヵ月ほど、外国人などいない中西部の超田舎の農家で4人の子供の世話をしました。(そこで、実子ネグレクト、里子虐待など目撃。)

 もちろん、そんな経験は履歴書に書いたことはありません。私にとっては、日本で働いた後、大学院が始まる前の息抜きでした。その後、デンバーでも子守りをしたのですが、デンバー一の金持ち宅を訪れ、家庭内不和、小姑嫁問題などを目撃し、「お金があっても幸せになるとは限らない」というのを悟り、貧しく育ったために子供のころから抱いていたマネーコンプレックスが落ちたのが、私にとっては最大の収穫でした。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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