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有元美津世のGet Global!

スポーツ(アジア杯)に見るグローバル化2019.02.05

 

 今回のアジア杯で、日本を破って初の優勝を遂げたカタール。決勝前には、カタールの選手のうち「2名が代表の資格がない」と、(準決勝でカタールに負けた)UAEがAFC(アジアサッカー連盟)に異議を申し立てました。*  

 カタールの選手には、スーダン、フランス、エジプト、ポルトガル、イラク、クウェート、アルジェリアなど外国生まれでカタールに帰化した選手が多いのです。イラク出身の選手に至っては、父親が有名なイラクのサッカー選手だったこともあり、対イラク戦でゴールを決めた際には、イラク人ファンから「売国奴」との批判を受けました。

”ハイブリッド”チーム


 実は、カタールよりも外国生まれの選手が多いのが、今回、アジア杯初出場のフィリピンです。白人みたいな顔立ちの選手が多く、大半の選手の名前がフィリピン系の名前ではないのですが、選手23名中、フィリピン生まれは4名だけで、ドイツ生まれの選手(6名)の方が多いという… その他、イギリス、オランダ、デンマーク、スペイン生まれなど。父親が日本人で浦和レッズユースに所属した選手もいます。

 近隣諸国のようにサッカーが国民的スポーツではないフィリピンでは、10年ほど前に、強化策として海外から選手をかき集めることに。サッカーのビデオゲームで、英チェルシーのユースチームに属する二人の兄弟がフィリピン代表として活躍していたことが注目を浴び、イギリスからスカウトされた後、海外でフィリピンにルーツを持つ選手が、どんどん発掘されました。その結果、フィリピンの代表チームは飛躍的に強くなり、今はベトナムに抜かれていますが、昨年までは、FIFAランキングで東南アジアで最高位だったくらいです。

 昨年のスズキ杯では、インドネシアの監督に「フィリピン代表チームはハイブリッド(混種)で、純粋なフィリピンチームではない」と非難されたそうですが、フィリピンの選手の場合、皆、母親がフィリピン出身なので、出場資格としては何の問題ありません。ちなみに、フィリピン代表チームの愛称、Azkalsは、タガログ語で「雑種犬」という意味です。

各国で増える多様なルーツの選手

 日本でも外国にルーツを持つアスリートが増えているように、こうした選手は各国で見受けられます。前回、父親がベトナム人で母親がフランス人、フランスで生まれ育ったタイのサッカー選手について書きましたが、FIFAの規定では、彼はフランス、タイ、ベトナムの3ヵ国で代表としてプレイすることが可能です。

 ベトナムの代表チームで、小柄な選手に混じって、一人だけ飛び抜けて大きいゴールキーパーのDang選手ですが、彼はロシア生まれで、バレーダンサーの父親がベトナム人、母親がロシア人です。ロシアのユースクラブでプレイしていたものの、プロとしての契約に至らず、「ベトナムなら引く手あまただろう」と思ってベトナムに移住。所属クラブを見つけたものの、ベトナム語があまりできず、ベトナムの習慣にも馴染めず、チームメートや監督にも”ロシア人”として嫌われて試合に出せてもらえず、ラオスのチームに出されることに。その後、ロシアに戻ったものの、やはりクラブで試合に出ることができず、またベトナムに戻りプレイしていたところ、日本人コーチに代表チームに呼ばれたそうです。

 昨年のスズキ杯では、5試合を無失点で抑えて一躍スターに。中国やインドネシアのクラブからのオファーを蹴り、アジア杯開幕前に、タイのチームへの移籍が決まりました。

 

 日本で外国人就労者が増えているように、経済のグローバル化により、出身国以外で就労、居住する人は、どんどん増えています。その結果、複数の国にルーツを持つ選手も、さらに増えることでしょう。

 

  

* カタールの帰化選手に関しては、以前から問題になっており、2006年のW杯予選でも、出場資格のない選手が出場してイラクに勝利。イラクがAFCに異議申し立てをしたものの手続きの不備を理由に棄却。その後、スポーツ仲裁裁判所に提訴したが、敗訴。今回のUAEの異議申し立てに対しても、AFCは「二人とも出場資格を満たしている」と判断したが、どのように資格をクリアしているのかは公表していない。両選手とも、母親がカタール生まれだと主張しているが、UAEサッカー連盟はそうではない証拠を持っているらしく、今後、訴訟に発展する可能性も。なお、カタールサッカー連盟は賄賂を使うという噂も... 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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