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なぜIT企業の外国人は日本語がうまいのか?

 
あなたの「日本語マスター法」を教えてもらえますか?

テレビを見ていても町を歩いていても、日本語を上手に操る外国の人が増えている。あるとき、日本語がペラペラのアメリカ人に出会った。文法も発音もほぼ完璧。外国語のなまりはなく、むしろ東北弁のなまりが少しある。聞けば、東北地方の大学に留学経験があり、留学中のわずか1~2年で、日本語をほぼマスターしたという。今は、日本語を巧みにあやつりながら、IT企業の社員として働いている。

 「IT企業に勤める外国の人って、なんで日本語がうまいの?」「英語を何年も勉強しているのに、英語を話せない日本人(私)が多いのはなぜ?」「もしかしたら、外国人と日本人の脳の違いに秘密がある?」

 そんな謎を解き明かすべく、日本のIT企業に勤める4人の外国人に体当たり調査を敢行。彼らの日本語マスター法から、効果的な語学学習のヒントを探った。

Case3 恥ずかしがらずに、とにかくしゃべる

  Janet M. Snowdon
  ジャネット・スノードンさんの場合
  日本アイ・ビー・エム

 

 

 

日本語のピークは水曜日


 世界170カ国以上で事業展開するグローバル企業、IBM。その日本法人である日本アイ・ビー・エム本社で会ったジャネット・スノードンさん(同社エンタープライズ事業本部 ビジネス開発事業部 事業部長)の第一印象は、とにかくトークが軽妙で、話すスピードが速い。ジャネットさんの仕事上のコミュニケーションはほぼ日本語。反対に休日は80%が英語の生活だという。

 

 「月曜日はちょっと日本語が出てこないですね。で、金曜日の17時になると、もう疲れてきて、自分では日本語をしゃべっているつもりでも“片仮名イングリッシュ”。英語がだんだん出てくるんですよ」

 

 インタビューしたこの日は水曜日。調子を尋ねると、「ちょうどピークなんです。日本語の」と明るく笑う。

 というわけで、幸運にも絶好のタイミングで話を聞くことができた。


恥ずかしがらずにしゃべること


 アメリカ人の父と日本人の母の血を引くジャネットさんは、6~16歳を日本で過ごした。ただ、当時はインターナショナルスクールに通っていたので、正式に日本語を習ったことはないという。

 

 アメリカへ戻り、カリフォルニア大学デービス校に進学。化学工学を専攻し、卒業後はIBMかワインの道に進もうか迷ったという。

 

 「デービスはワイン造りで有名な学校なんですよ。でも当時はIBMの方が収入が安定していたので、お父さんが『IBMに行きなさい』って」

 

 そのひと声で、アメリカのIBMへエンジニアとして入社した。日本には2007~2009年、2012年~現在、と2回赴任している。2007年に来たときは、日本語に慣れるまで大変だったとか。

 

 「使わないと忘れますね。アメリカではカリフォルニアに住んでいました。カリフォルニアは日本の方も多いので、日本のレストランに行けば日本語が聞こえてきますし、日本のテレビ番組も放送されていたので、聞くことは大丈夫でした。ただ、3年前に来た当初も、今ほど話せなかったです」

 

 そのブランクを克服し、日本人に負けないトーク力を身につけられたワケは。

 「アメリカ人なので、間違っても恥ずかしくないんですよね。しゃべらないとうまくならないですよ。アメリカでは大学でも研修でも、意見を出し合うので、ディスカッションにも慣れていると思います」

 

 やっぱり「間違っても恥ずかしくない」と腹をくくるのは、外国語の上達には大きなポイントだ。大人より子どもの方が言語の習得が早いのも、間違ってもそれほど恥ずかしいと思わないからかもしれない。

 

 「私から見ると、日本の方はみなさん、正しい英語で話さなければ、と思っているように感じます。正しい文法で話さないといけないって。でもそれは間違い。パーフェクトを目指すより、とにかくしゃべることが大事。上達するにはそれが一番だと思います」

 

 もうひとつ、多くの日本人が抱える悩みは、「英語で言いたい言葉がすぐに出てこない」ということ。これには、ディスカッションすること自体に慣れていないという、国民性の違いもありそうだ。


文化に興味を持つことが習得のカギ


 語学をマスターするには、とりあえず話すこと。そして、さらにブラッシュアップするには――。

 

 「その国のカルチャーに興味を持つこと。私には日本の血が入っているから、すごく日本のことに興味がある。知り合いのアメリカ人には、フランスの歴史が好きでフランス語がペラペラの人がいるし、日本人の知り合いにも、イタリア料理が大好きで、イタリア語がペラペラな人がいます。歴史でも料理でも、文化に興味があると、自然と言葉にも興味がわくと思います」

 

 そうすると、日本のIT企業で働いている外国人は、もともと日本のカルチャーが好きで、日本にやって来た。だから、日本語がうまい……。

 

 「そう、ゲームとか。日本はコンピューターゲームの国なので、いろんな国から人が来ていますよ。あとは、アニメとかJ-POPも世界に注目されていますよね」

 

 ゲーム、アニメ、漫画、J-POP、アート、デザイン……。前出、アマゾンのデイビッドさんしかり、日本語をマスターした外国人には、日本の文化に興味を持っている人が、確かに多い気がする。そう考えると、ITの中心はアメリカだ。日本人のIT系エンジニアに英語が得意な人が多いのは、ITが好きで興味があるから、というのも納得できる。今回の「IT企業に勤める外国人は日本語がうまい」という仮説について、ジャネットさんはどう思っているのだろうか。

 

 「これは私のセオリーですけど、コンピュータープログラミングってパターンなんですよね。言葉もパターンなので、テクニカル専門の人は、コンピュータープログラミングと同じように、言語をパターンで認識するから、語学を習得しやすいのかもしれない。だってIBMの研究所にいる日本人は、全員英語ペラペラですよ」


無意識に出てくる言葉は英語


 今は日本語で考えて、そのまま日本語で話すというジャネットさんだが、びっくりしたときや危険な場面では、思わず英語が出てしまうとか。会話の中でも、日本語の文脈の合間に、ごく自然に英語が混ざる。

 

 「まだ100%日本語にはconversion(変換)できていないんですよね」

 これから大阪に向かうというジャネットさん。もしかして関西弁もわかるんですか。

 笑いながら、「あんまりわからへん」と絶妙な返しをしてくれた。

 

(取材・文/佐藤未来)


次回につづく

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