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先輩に聞く!インドネシア語との付き合い方

先輩に聞く!インドネシア語との付き合い方 その12015.06.29

日本人がインドネシア人のなかで暮らしていると、インドネシア語で「マウ・クマナ」と声を掛けられることがよくあります。日本語では「どこへ行くんですか?」という意味で、最初はなんと答えたものかと、少しうっとうしく感じることもありますが、日本でも、見れば分かるのに「お出かけ?」と聞かれるのを思い出してからは、気が楽になったのを思い出します。

 

さらに、外出からの帰りがけに近所の庭先をちょっと覗いて隣人に挨拶したりすると、「アヨ、マカン」と声をかけられます。「ちょっと食べていかない?」というお誘いです。私の日本人の友人は、そんな時は本当にご馳走になっているという豪傑がいるが、じつは、その隣人にとっては「今日はいい天気だね」という程度の挨拶をしたつもりで、本当に家の中に入って来て、ご飯を食べて行く日本人には、さぞ戸惑ったことだと思われます。しかし、そこはインドネシア人のいいところで、大いに寛容に有り合わせの食事でもてなすことは想像に難くありません。決して裏で悪口を言ったりはせず、むしろ楽しんでいたと思います。どんな言語もそうですが、その国の社交辞令的な言葉がそれぞれあり、そのようなコミュニケーションに馴染むことも言葉を覚える近道です。

 

たまたま学食で隣り合わせただけの人が食事を始める時、「マリ」と声を掛けてきます。インドネシア語の「マリ」とは、日本語で「一緒にどお?」という意味に受け取れるため、同じ行動を相手に誘う言葉だから、インドネシア語初心者の頃は「いや、僕は食事は済ませた」とか「まだお腹は空いてない」などのインドネシア語を頭に浮かべて返事を考えていると、相手はこちらの返答とは関係なく、自分の食事をさっさと食べ始めている。日本語なら「お先に」という程度の意味だったのでしょう。        

 

こうした何気ないひと言が、実はインドネシアの社会では日本以上に大事な役割を果たしていることに、ある時気付かされました。インドネシアで学生運動が激しく盛り上がった時期、キャンパスを学生側が封鎖して治安部隊と対峙することになるその直前に、大学構内の学生自治会室を訪ねたことがあります。面会は最初から緊張していて、会話もぎこちなかったことを思い出します。私は気分を変えようと、ポケットから封を切ったばかりのタバコ箱を取り出し、まず相手に差し出しました。インドネシア人が良くそうするからです。相手の学生運動家は私の顔を見つめて、日本人からこうしてタバコを勧められたのは初めてだ、と言いました。そして、日本人は親しくなければタバコでも、食事でも、だいたい勝手に済ます。自分のお金だから当然なんだろうけど…と付け加えました。この後、彼らとすっかり打ち解けて話も進んだことは言うまでもありません。

 

インドネシアの人は、職場でも、隣近所でも、あるいは偶々居合わせた集まりの場でも、ギスギスした人間関係を嫌います。だから、いつも周りとの関係に気を遣っています。 初めて会う人がいれば、早く打ち解けたいし、仲間になりたい。そういうコミュニティーでの潤滑剤が何気ないひと言なのではないかと思います。インドネシアが初めての人でも、そのひと言に慣れるのにせいぜい二ヶ月、その間にインドネシアの歌を一つでも覚えたら、あなたはもう立派にインドネシア人の友達になっているでしょう。

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この記事の筆者

城田 実

1972年横浜市立大学卒業、1973年外務省入省。74年から2年間インドネシアのジョグジャカルタ、ガジャマダ大学留学。以後、インドネシア大使館、外務省アジア局などインドネシア関係を中心に勤務。インドネシアの3総領事(スラバヤ、メダン、デンパサール)を歴任。2011-2013年まで2年間デンパサール総領事館総領事を就任後、外務省を引退。現在、日本在住。約40年間のインドネシアを知るエキスパート。現在、インドネシア研究会 Santai 代表。

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