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タカシの外資系物語

デキる外資の時間管理 ( その 2 ) - Delegationの方法2007.03.20

自分でやる必要のない仕事とは ?

( 前回の続き ) 前回のコラムでは、デキる外資系社員の時間管理法について、 Time Management Matrix という考え方をもとに説明しました。今回は、その Matrix の中の【エリア 3 】 - 「重要でない」 ( Not Important ) が 「緊急である」 ( Urgent ) - 仕事を、いかに少なくするかということについてお話しします。 


まず、【エリア 3 】にはどのような仕事が当てはまるのか、考えてみましょう。 


「そもそも緊急な仕事って、全て重要なんじゃないの ? 」 


これは間違い。緊急と重要は違います。このように考えた方は、緊急と重要の区別がつかずに、「緊急であることが重要を追い出す」状態になっている可能性が高いと思われます。本当にやるべき仕事をしていないにもかかわらず、働いた気になっている可能性がありますから要注意です。 


「お客様に関する仕事はほとんど重要なことだから … 重要じゃないのって、社内の仕事かな。社内処理の締め切りって、いつも気になるし … 」 


そうですね。では、お客様に関する仕事と社内処理って、何が違うのでしょうか。 


「うーーん。強いて言えば、自分がやらなくちゃならない仕事かどうか、ってことかな … 」 


その通り。「重要か重要でないか ? 」を分ける基準の 1 つは、「自分にしかできないか、他人にもできるか ? 」ということです。 


ただし、多くの人にとって、自分でやるべき仕事と自分でやる必要のない仕事を切り分けるのは困難です。なぜなら、これまで「これはオレの仕事だ ! 」と思い込んで、何の疑いもなくやってきた人が、明日からいきなり「これはオレじゃなくてもできる ! 」と考え直すのは現実的に難しいことだからです。そんなときこそ、前回ご紹介した Time Management Matrix を使いましょう。【エリア 3 】 - 「重要でない」 (Not Important) が 「緊急である」 (Urgent) - に自分が分類した仕事の大半は、自分でやる必要のない仕事、他人にもできる仕事のはずです。

Delegation の基準

自分でやる必要のない仕事が特定できたとしましょう。では、だれにやらせるのか ? それはもちろん、部下にやらせるのです。外資では、自分の仕事を部下に委譲することを、「Delegation」といいます。このDelegationの巧拙が、マネージャーの評価につながると言っても過言ではありません。 


「権限委譲なら日本企業にもある ! 」と言う方がいるかもしれません。それはその通りなのですが、外資のすごいところは、 Delegation の基準を明確に定義付けているところだと思います。その基準とは、「その仕事を自分でやらなければならないという会社のルール (rule) 、法的 (legal) または道徳的 (moralistic) 要件があるか ? 」 ということです。 


「会社のルール」というのは明確ですね。「その仕事は課長がやること ! 」と決められていれば、部下に Delegation することはできません。「法的」というのはもっと基本的なことを言っていて、例えば社員が勝手に役員の印鑑を使って、契約書を作る … なんてことをしてはいけませんよね。公文書偽造という犯罪になりますから。また「道徳的」というのも、ごく当たり前のことを言っていて、例えばペンを床に落としたときに、特別な事情がないにもかかわらず、部下に向かって「ペンを拾え ! 」などと言ったらどうでしょう。これは業務命令ではなくて、完全に非道徳な職権乱用ですね。 


つまり、こういうことです。外資では、マネージャーに対して、最低限のルールに抵触しない限りにおいて、ほとんどすべての仕事を Delegation せよ、と言っているわけです。 


しかし、これを実現するのは大変なことです。ルール上やらざるをえないこと以外は、すべて部下に振る … そんなことしたら、マネージャーの仕事なんてなくなってしまうんじゃないでしょうか ?

Delegation の目的

ほとんどの仕事を部下に Delegation したマネージャーは、一体何をするのでしょうか。それは、「部下の育成」です。 


外資では、 Delegation というのは、マネージャーが自分の時間を増やすための手段というよりも、部下を育成する機会としてとらえています。部下に仕事を振ることによって、自分が楽になって良かったな … ではなくて、部下に仕事を振って楽になった分、その部下の育成に時間を使いなさい、と考えているのです。 


これは非常に重要なポイントです。多くのマネージャーにとって、仕事を Delegation できない最大の理由は、「自分でやった方が早いから」、という理由です。これは、 Delegation を単なる「仕事削減の手段」としてしか捉えていないからです。「だれでもできる仕事だけど、緊急度合から考えて、自分でやる方が確実だし、リスクも少ない … 」という考え。しかし、 Delegation を「部下育成の機会」と考えると、話は違います。マネージャーがサポートすることによって、部下がマネージャーと同じくらい早く処理できるように教育してやればいいのです。 


また、主に【エリア 3 】で Delegation を実施するというのも「ミソ」です。【エリア 3 】というのは、「緊急だが重要ではない」仕事ですから、部下に Delegation した結果、仮に部下がその仕事を失敗したとしても、そもそも重要ではないので、それほど大きなダメージは受けなくて済むのです。 


実際、外資のデキるマネージャーというのは、 Delegation の達人です。私がこれまで出会った中で一番強烈だったマネージャー M の Delegation ぶりたるや、半端ではありませんでした。彼は、自分の上司である役員から指示された仕事の全てを部下に振って、その上、その役員に対する説明までも部下にやらせていました。自分は説明の場に同席もしないんですよ ! その当時は、「このマネージャー、全く仕事しねぇな … 」くらいにしか思っていなかったのですが、なぜか、すごい高評価で、あれよあれよという間に、役員になってしましました。今思うと、彼は Delegation を通じて部下を育成していたに違いありません。役員への説明に同席しなかったのも、それまでに部下の説明を何度もレビューして、自信があったからこそできたのでしょう。外資では、同じ仕事なら、自分でやるより、部下にやらせた方が高い評価が得られます。マネージャー M が出世したのも、外資では当然のことなのです。 


さて、私もマネージャー M を見習って、どんどん Delegation していきますかね、っと。この仕事はオレがやらなくてもいいから、だれかに Delegation しよ … お ! あそこに、マサオがいるぞ ! 


私 「マサオ ! どう、元気。ちょっと、仕事をお願いしたい … 」 


マサオ 「ちょっとタカシさん、聞いてくださいよ ! 今のプロジェクト、仕事が多すぎて、徹夜続きで、もーウンザリ ! こんな状態が続くんなら、マジで転職考えちゃいますよ ! 」 


私 「い、いや … まぁ、そう言わずにさぁ … 」 


マサオ 「あ、そうそう。昨日、人事部から、評価の書類を早く出せって来てたな ・・・ マジ、うぜー。面倒だから、去年と一緒でいいんで、タカシさんから出しといてもらえません ? 」 


私 「へ ? 」 


マサオ 「かわいい部下を助けると思って、ね。ちょっとくらい、仕事肩代わりしてくださいよ ! 」 


私 「は、はぁ … 」 


マサオ 「じゃ、よろしくーーっ ! 」 


… 逆に、 Delegation されとるわーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ ! (T-T)(T-T)(T-T) 


みなさんも、部下に Delegation するときはご注意を。トホホ … (T-T)(T-T)(T-T)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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