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タカシの外資系物語

日本版 “女性活躍推進” が イケてない理由(その3)2015.03.17

体力が劣る = 仕事ができない は成り立つのか?!

 

前回の続き) 今回のコラムでは、「ダイバーシティ」 の二重性 についてお話します。ダイバーシティが進んでいる社会においては、性差(ジェンダー)を厳格に尊重する文化があります。ダイバーシティ と 性差尊重 は、どのように両立しているのでしょうか? 

 

当然のことですが、男性と女性では、性差(ジェンダー)が存在します。一般的に、体力面においては、男性の方が優位だとされていますし、事実その通りでしょう。

 

一方、女性には “子供を産む” という機能が備わっています。しかし、出産をすれば、その前後の期間は、それに専念せざるをえなくなり、一定期間は仕事を断念しなければならない状況となります。また、平常時においても、月に一度の生理(月経)の期間は、体力的に非常に厳しい症状を抱える女性がほとんどです。

 

(注:このコラムでは、従来タブー視されてきたことも、あえて記述しています。でないと、問題の本質が見えないからです。私見では、“言いにくいことを避ける中途半端な優しさ” が、ダイバーシティの定着を阻害する最大の障壁だと考えています)。

 

以上のような 性差 をもって、

 

● 女性は男性より体力面で劣る + 女性特有の事象により、仕事を優先できない局面がある

∴ 女性はリーダーになれない、責任やプレッシャーのかかる仕事に就かない方がいい

 

という ヘンテコリンな論理が成り立っている。これが、従来の、いや、現時点においてでさえ 日本のビジネス社会におけて、大勢を占める考え方です。

 

男性諸君、大いなる “勘違い” を捨てよ!

 

厄介なことに、この考え方をする人(=男性)は、

 

「このように考えることは、女性に対する “優しさ” である」

 

という固定観念を持っているのです。女性は体力的に劣る、だから、職場でしゃしゃり出ないほうがいい。お茶出しやコピー、電話応対など、庶務的な作業に従事した方がいい。

 

そして、この考えがもっと進むと、女性は仕事をしない方がいい。家庭で、育児・家事をして、安穏と過ごしていたほうがいい。だって、女性は 体力面で劣るのだから、その方が女性のためになるのだ!・・・ となるのです。

 

アホ かーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!

 

断言します。上記の考えは、95% 間違っている。以下に、その理由を列挙します。

 

(1)    “体力がないと、仕事ができない” ・・・ いつの時代の話やねん! 百歩譲って、作れば売れる、かつ、人件費が低く、グローバルでの競争力が高い 高度成長期 なら、ある部分で成り立つかもしれません。いわゆる “量” の時代。しかし現在は、“質” の時代です。体力の優劣 と 仕事の “質” には、ほとんど相関関係がないことは明らかでしょう

 

(2)    “家庭で、育児・家事をしていれば、安穏と過ごせる” ・・・ 育児や家事、やったことあるんか! どれだけ大変やと思ってんねん!! 育児はプレッシャーがかからない? そんなわけないだろーーーーーーーっ!!! 小さいときなどは、ちょっとしたミスで、子供が死ぬことだってある。すぐに熱出すし、吐くし、泣き止まないし・・・ 育児は、この世で最もプレッシャーのかかる仕事の1つです。少なくとも、男性のみなさんが定常的にやっている仕事の10倍はプレッシャーがかかるのです。

 

(3)    “女性は リーダー に向かない” ・・・ 複数名の女性リーダーに仕えた私が、その経験則から断言します。絶対、そんなことない! 女性の上司、どれだけ恐いと思っとるんですかーーーーーっ
(泣! し、失礼・・・ 恐さ と リーダーシップ は 関係がないですね・・・) “女性 と リーダーシップ” については後述します。

 

繰り返しますが、日本における女性活躍推進を阻害している最大の要因は、上記のような、男性の発想 に尽きます。実は、傍目にはダイバーシティに理解があるような顔をしている社長さんほど、腹の奥底では、上記のような思想の権化だったりする。すごく根が深い、だから、解決に時間がかかるわけです。

 

女性の社会進出をビッグビジネスに!!

 

男性の多くが上記の発想を捨てられない1つの要因として、過去の成功体験 が挙げられるでしょう。団塊の世代が活躍した高度成長期は、言い換えれば、“体力”重視の社会 でした。残業・土日出勤した者が優秀、なぜなら、作れば作っただけ売れるからです。

 

しかし、この発想は、バブル崩壊によって、完全にレジーム転換を迎えます。にもかかわらず、先進国の中では唯一、日本だけが、過去の成功体験に固執し続けた。結果、日本経済の、グローバルにおける相対的な地位低下を招いたわけです。

 

先進国の中には、かつては日本以上に女性の人権を軽視していた国もありました。スペインです。軍事独裁政権であったフランコ政権が倒れ、1980年代以降、スペインは男女平等を柱とする民主化路線に、急激に舵を切ります。

 

「これからは、女性の時代になる。女性が社会進出して、活躍できるよう、ビジネスパーソン向けのスーツを作りたい!」

 

スペインのガリシア地方で小さな仕立屋を経営していた アマンシオ・オルテガ は、ハイセンスな女性ビジネスパーソン向けの洋品店を開きます。これが現在の ZARA です。ご存知の方も多いと思いますが、ZARAの企業理念は 「世界中の女性に、もっとおしゃれになってもらいたい」。 結果、売上はユニクロの2倍、創業者のオルテガ氏は世界一の大富豪になりました。

 

もちろん、ZARAを創業したオルテガ氏が財を成しただけではありません。スペインでは、フランコ政権下において、ほぼ0% であった女性の社会進出も進み、2013年の統計では、女性の役員・取締役比率も 9.5% となっています。この数字は全体の20位で、トップのノルウェー(36.1%) や フランス(4位、18.3%)に比べると、決して高い数字とはいえません。しかし、たった30年で、0 から 10 に引き上げた推進力は評価に値するでしょう(ちなみに、日本は1.9% の43位。話になりまへんな・・・)

 

さて、私は上記において、「断言します。上記の考えは、95% 間違っている・・・」 と書きました。なぜ、100%ではないのか? つまり、女性が体力的に劣ることが仕事に悪影響を与えることについて、5% は是認しているわけです。次回のコラムでは、その理由についてお話しましょう。

 

(次回続く)

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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