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タカシの外資系物語

外資流! “コンプラ違反” をなくす方法(その2)2017.11.14

コンプラ違反の記者会見、ありがちな失敗とは?!


(前回の続き)危機対応融資の不正、品質改ざん問題、無資格担当者による新品検査等々、日本の大手企業によるコンプライアンス違反が頻発しています。コンプラ違反を出してしまったことは真摯に反省すべきことですが、過度に委縮してしまうのはよろしくない。トラブルを契機に、大きな企業改革を実施できるチャンスだと捉えて、前向きに対応していくことが重要です。これ以外にも、日本企業には、コンプライアンスに対して、いくつかの課題がありそうです・・・ 

コンプラ違反に対して、日本の企業は委縮しすぎるという以外にも、いくつかの課題があります。まずは、アナウンスの仕方。“初動”が遅い! アナウンスの初動が遅い、ことによって、以下のような悪循環を起こしています。

 

(1) コンプラ違反かもしれない事象が、社内で発覚。が、多くの場合、まともに取り上げられない or モミ消される

(2) コンプラ違反かもしれない事象が、ほぼ間違いなくコンプラ違反であることが見えてくる。このあたりから、経営陣や広報部が、超焦って、記者会見をセットする

(3) 超焦ってセットしたため、記者会見当日のアナウンス内容は、最新のものではなく、少し古いものとならざるえない。加えて、二度と記者会見をしたくない経営陣は、調査が完了していないにもかかわらず、「これ以上、不正はありません!」などと、言い切ってしまう

(4) 記者会見から間を空けず、さらなる不正が発覚する。再度、記者会見。「すんましぇん、嘘をついていました・・・(T-T)」

ま、全てが上記のようだとはいいませんが、ありがちな傾向としては、こんな感じでしょう。要は、広報戦略が下手というか、戦略がないのです。だから、行き当たりばったり、あたふた感満載となる。

記者会見で言ってほしいセリフとは?!


もちろん、非常にセンシティブで難しい判断に迫られるんですよ、この手の問題は・・・。確定していない段階でアナウンスなどしたくはないだろうし、経営陣にはそういうインセンティブが働くことは間違いないでしょう。しかし! 火のないところに煙は立たない、の格言の通り、(1)のような話になっている段階で、ほぼほぼ事実なんですよ、その事象は・・・。ならば、昨今のトレンドでは、「コンプラ違反の可能性を察知した。詳細は、調査中です・・・」と、前倒しでアナウンスしてしまった方が、いい結果を招く可能性が高いのです。

「今回は、残念ながら、良くない事象のアナウンスとなってしまい、本当に申し訳ございません。今後とも、わが社では、潜在的なリスクに関して、消費者をはじめとしたステークホルダーの皆様に対して、前倒しでお伝えしていくことをお約束いたします。次回のアナウンスは、是非とも、画期的な新製品の紹介、といった、前向きで意味のあるお話しとなるよう、従業員一同、さらなる努力を続けて参ります!」
 

・・・ぐらいのことを、言ってほしいもんです。

コンプラの “内” と “外” を定義する


日本企業のコンプラ対応に関する課題としては、企業スタンスというのも看過できません。企業スタンス、言い換えれば、社内外でコンプラをどのように伝え、取り組んでいくか? 特に重要なのは、社員に対する教育・啓蒙の方法です。
 

多くの日本企業では、コンプライアンスを “違反してはいけないもの” として、社員に伝えます。あれしちゃダメ、そんなこと言っちゃダメ、ダメダメ尽くしのオンパレード・・・。そもそも、コンプラ違反か否かの境界線を明示しないもんですから、元来用心深い日本人は、ほとんどのことを、ダメにしてしまう。結果、いわゆる “コンプラ疲れ” の状態になって、現場が委縮してしまうのです。

 

一方、外資系企業はどうか? もちろん、外資だって、コンプライアンス = “違反してはいけないもの” として認識しています。ただし、以下についても、社内で徹底をはかります。

 

(1) コンプラ違反か否か? の境界線を明示する

(2) コンプライアンスの “内” と “外” について、企業と社員の目線で定義する

まず(1)ですが、「コンプラの境界線を明示する」 というのは、言うは易し・・・ でして、非常に難しい。しかし、難しいからといって、中途半端になりそうだからといって、諦めないのが外資系企業のいいところなのです(ときに、悪いところにもなりえるのですが・・・)。
 

例えば、セールスの現場において、クライアントに言ってはいけないNGワード、なんてのも、可能な限りにおいて、リスト化しようとします。もちろん、簡単にはできないんですよ、完璧なNGワード集なんて・・・。だけど、やる。具体的に、多くを抽出すれば、だれが見ても判断できる可能性が高まるから、やるのです。
 

次に(2)ですが、外資系企業では、コンプライアンスの “内” と “外” を、以下のように定義しています。

 

  • コンプラの “内” ・・・ この範囲内であれば、企業は社員を “守る” ことができる
  • コンプラの “外” ・・・ この範囲に来てしまうと、企業は社員を “守る” ことができなくなる。だから、ここには来ないで!


 “守る” とはすなわち、何か問題が起きて、だれかから訴えられた場合に、企業が矢面に立ってくれるか、社員の個人的な責任にするか、の違いだと思えばいい。

 

「企業はあなたを守りたいので、コンプラの “内” にいてください。その範囲内で、最大のパフォーマンスを発揮してください!」

 

というのが、コンプラに対する外資系企業のスタンスです。なんか、正論ぶっているように見えるかもしれませんが、企業がコンプライアンスに対峙する、というのは、そういうことなのです。

 

コンプラ違反一発で、甚大な打撃を受ける昨今、経営陣が ダメダメの姿勢でコンプラを位置づける気持ちは痛いほどわかります。だからこそ、それを逆手にとって、前向きなコンプラ戦略を打ち出して、企業価値を高める日本企業が登場することを、願ってやみません。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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