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タカシの外資系物語

外資流 タレント育成方法(その2)2018.10.02

隣の部署は、“内部”? “外部”?


(前回の続き) グローバルで “タレント” という場合、歌やダンス、演技がうまいといった、いわゆる芸能界で活躍できる才能だけでなく、様々なものが含まれます。スポーツ業界で活躍するアスリートも “タレント” だし、企業でいえば、営業やマーケティング、経営陣のリーダーシップなんてのも “タレント” の一種です。では、外資系企業において、“タレント” はどのように育成されているのか? 以下でお話ししたいと思います。

 

企業内におけるタレントの育成はタレント・アクイジション(Talent Acquisition)という機能・部署が担います。では、タレント・アクイジションとは何か? Acquisition という単語は、「獲得」という意味なので、日本語に訳すと「才能なる人材の獲得」といった感じでしょうか。日本語で「獲得」というと、外部から調達するイメージが強いですが、ここでいう Acquisitionには、外部人材の採用だけでなく、自社内部人材の探索・育成も含まれています。つまり、組織の内外問わず「才能」をゲットする、という意図がこめています。

 

ここで1つ余談になりますが、企業人事における “外部” と “内部” について、補足をしておきましょう。普通、日系企業では “外部” というのは社外、“内部”というのは社内を指します。なんか当たり前のようですが、外資のそれはちょっと違う。外資系企業では、“外部” というのは自分の組織以外、“内部” というのは自分の組織内を指します。

 

例えば、今あなたが外資系〇〇カンパニーの営業部に所属しているとしましょう。この場合、同じ部署は “内部”、競合他社の△△カンパニーは “外部” というのは、日系企業と同じです。では、〇〇カンパニーの総務部、つまり同じ会社の他部署は、どうなるか? 外資の場合、これは “外部” です。外資では、社内であろうが、社外であろうが、自分が所属する部署以外の組織は、“外部”と認識するのです。

社内に “転職” する?!


上記のことは、実務的にどのような影響があるのでしょうか? 外資でパフォーマンスが上がらない社員はカウンセリング・アウト(Counseling Out)といって、クビ(解雇)になります。この場合、クビになった社員はどこに行くかというと、社外はもちろんですが、社外の他部署に “転職する” という選択がありえるのです。

 

実際に、私が所属する会社でも、コンサルティング部門をカウンセリング・アウトとなった人材が、社内のバックオフィスに異動した例が、結構あります。つまり、「社内に転職した」ということになります。

 

誤解がないように一言申し添えておくと、コンサル部門からバックオフィスに移るのも、そんなに簡単なわけではありません。外資のバックオフィスというのは、人事であれ、経理であれ、相応のスペシャリティが要求されます。ですから、社内の異動といっても、何らかのゲタをはかせてもらって有利に進められるというわけではなく、外部から転職してくるスペシャリストと同様の基準で見られるという点を忘れてはいけません。

 

日系企業の場合、「Aくん、営業はダメだったけど、頭はいいはずだから(偏差値の高い大学を出ているし・・・)、IT部門なら活躍できるんじゃないか?」というような、わけのわからない論理がまかり通るのですが、外資の場合、それはありえない。各部門には、最低限必要とされる基準があって、それを下回る人を採用するといった情実人事は存在しないからです。

 

(※外資のカウンセリング・アウトについては、機会を見つけて、詳細にお話ししたいと思います。)

“タレント” を定義する仕組みとは?!


“タレント” の話に戻しましょう。企業におけるタレント・アクイジションの機能は、以下3点に要約できます。

 

(1)自社が欲する “タレント” を定義する

(2)外部から “タレント” をリクルーティングする

(3)組織内に存在する “タレント” を発掘・育成する

 

いかがでしょう? (2)(3)はなんとなくイメージがつくと思うのですが、(1)が結構難しい、特に日本人にとっては・・・。例えば、人事部長さんに、「どんな人材を育成したいですか? 採用したいですか?」と質問したとしましょう。その場合、それなりの返答はあると思うんですよ、自立している人とか、探求心のある人とか・・・。

 

しかし、自立している人を定義せよを言われると、非常に難しい。探求心のある人って、具体的にいうと、どんな人なのか? (1)が要求しているのは、自社が欲する “タレント” を具体的かつ定量的に定義せよ! と言っているのです。

 

実は、外資系企業においても、自社が欲する “タレント” を具体的かつ定量的に定義するのはかなり難しいのです。どうやって定義しているのか?

 

このことを実現するためには、ある仕組みが必要となります。ITと言ってもいい。その仕組みの仕様は・・・? 詳細は、次回のコラムでお話ししたいと思います。

(次回に続く)

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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