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タカシの外資系物語

外資流 タレント育成方法(その4)2018.10.16

人事の仮説を定義に近づける方法とは?!


(前回の続き) “タレント・アクイジション”(人材育成)において、非常に重要な要素となるのが、「タレントの定義」です。ここ最近、外資系企業を中心にある仕組みによってこれが実践されているのですが、さて、その仕組みとはどのようなものなのでしょうか?


自然科学と異なり、ビジネスや経営といった社会科学の難しさの1つに、「計算通りに事が進まない」ということが挙げられます。例えば数学において、

 

平行四辺形(なつかしい!)の定義 = 2つの対辺(向かい合う辺)が平行である四辺形

 

と一意に決まりますが、社会科学ではそうはいきません。

 

業績のいい会社が必要とするタレントの定義

 

といわれたところで、それは経営戦略や経営者の資質に依存しますし、外部環境によっても時々刻々と変わるでしょう。

 

では、ビジネスにおいて何らかの定義はできないのか? というと実はそうでもなくて、事後の結果論にはなりますが、定義に近いことは設定可能です。その最も有名な方法論は、「PDCA」でしょう。仮説を立て、実行し、効果を検証し、仮説を修正していく・・・。これを繰り返していく中で、仮説を定義に近づけていくわけです。

 “タレント・アクイジション” における タレントの定義 の PDCA は、次のように表現できます。


(仮説) SPIの●●の項目点が高く、TOEIC〇〇点以上で、運動部経験のある人材は業績に貢献する

(検証) 上記人材を雇用する前後での企業業績を比較する

(修正) SPIの●●の項目点が高く、TOEIC〇〇点以上で、(運動部にかかわらず)部活経験のある人材は業績に貢献する

・・・

 

イメージはこんな感じなんですが、これを管理していくのって、ものすごく大変なんですよねぇ。では、どうすればいいのか?!

 

人事領域における仮説の検証、つまりPDCAを実践するための手段として、外資系企業を中心に導入が進んでいるのがITの積極活用です。特に、人事分野でのITをHRテックといいます。

人間の評価は、定量可能か?!


従来、人事分野というのは、勤怠や社会保険等の実績管理以外では、ITの活用がほとんど進んでいませんでした。理由は、「(1)ヒトでないと管理できない=ITでは管理不能」と「(2)秘匿性」です。

 

まず、「(1)ヒトでないと管理できない=ITでは管理不能」ですが、これは思い込みというか、ITに対する無理解としか言いようがない。そもそも、社員や採用候補者の実績・能力(潜在的なものを含め)というものを客観的に測るには、定量的な情報を使うしかありません。最近では、上記で述べたような SPI などのテストを用いることで、性格や適性を定量的に把握することが、ある程度の確からしさをもって実現できるようになりました。実は、SPIの信頼性が向上したのもITのおかげでして、長い期間をかけて蓄積されたデータと実績を比較・修正することで、つまりPDCAを繰り返すことで、成し遂げられた成果に他なりません。

 

一方で、「人間の評価は、定量的なものでは測れない。点数化できない、定性面が重要である」という意見もあるでしょう。私も、そのこと自体は否定しません。しかし、定性面の評価というのは、多分に評価者個人に依存します。つまり、属人性が高く、客観性の乏しい。そうなると、コントロールが効かなくなるのです。結果、一部の人の恣意性が強く働いて、人事政策が進められていく。これが、人事政策における従来の課題だったわけです。

 

データが全て、とは言いませんが、データの蓄積とPDCAによって、人事政策の過半は対応可能です。残る+α を、経営陣の目利きがまかなう、という配分で進めるのがいいように思います。

人事部から墓場まで ・・・?!


次に、「(2)秘匿性」 ですが、今の時代においては、これは人間よりITの方がむしろ強い。「この人事上の秘密は、墓場まで持っていけ。死んでも言うな」という時代では、もはやありません。

 

従来、人事部門というのは、非常に閉鎖的な部署でした。これはひとえに、この「秘匿性」という要素が大きい。コロコロと人が入れ替わって、人事上の秘密が明らかになるというリスクを、経営陣が嫌ったからこうなったのです。

 

結果、人事の閉鎖性は、人事部担当者の塩漬け、つまり、ひとたび人事に配属されたら長期間異動がない、という状況を生み出しました。欧米のように、人事のプロを育成するという意味では長期間の在籍は効果的かもしれませんが、日本においては、「秘匿性」という意味合いの方が、はるかに強い。その人の可能性を摘み取っているという点で、直ちに改善すべき施策だと思います。

従来、人間にしかできないと思われていた、または、人間では対応できないような人事業務を、ITが実現できる・・・。具体的には、どのような内容なのでしょうか? 次回のコラムでは、HRテックを用いた驚きの人事業務についてお話ししたいと思います。

(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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