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タカシの外資系物語

外資系と資格(その4)2018.12.11

日本と欧米における資格の違いを変数化してみると・・・

 

(前回の続き) 外資においては最も評価される資格とは、一体何なのか?大半の読者の方は想像もしなかった無敵の資格についてお話ししたいと思います。

 

よく、日本の大学は入る(合格する)のが難しくて、出る(卒業する)のは簡単。一方、海外の大学は、入るのは簡単だが、出るのは難しい・・・と言われます。「入る(合格する)のが難しい」については、日本がこうなった背景には、中国の“科挙”の影響を大きく受けていると思います。

 

科挙というのは、600年~1900年ごろまで実施されていた中国の官僚登用試験を指します。その試験の過酷さは筆舌に尽くし難いもので、10年程度の浪人なんて当たり前だったとのこと。一方で、いったん合格してしまえば、高級官僚としての地位と名声が永久に保証されるというものでした(詳細は、宮崎市定著『科挙―中国の試験地獄』(中公新書)を参照してください。この本、めっちゃ面白いですよ!)大学だけではなく、日本で難関試験とされる司法試験や公認会計士試験も、科挙の名残を残していると思います。

 

一方、欧米の類似試験は、簡単とは言わないですが、10年も浪人するようなことはない。大学もそうだし、司法試験も会計士もそうです。一定の基礎知識が確認できれば合格させて、あとは実務、つまり経験を積んで一人前になってください、という発想です。まとめると、日本と欧米における資格の違いを、試験と経験(実務)という変数で表現すると、以下のようになります。

 

日本の資格 = 超難関試験の合格

欧米の資格 = 基礎的な試験の合格 + その後数年間の実務経験

 

もちろん、日本の司法試験には合格後に司法修習という制度があって、相応の経験を積んでから、実務の世界に入ります。会計士だって、二次試験合格後の数年間は、会計士補という立場で実務経験をすることが必須となっています。しかし、欧米のそれと比べると、形式的で、机上の論の域を出ないことは否定できない。なぜそうなるかというと、結局、実務において重要なのは、知識よりも経験だということに尽きるのだと思います。

欧米人は覚えない?! 計算もしない?!


加えて、日本の資格試験を超難関にしている要素の一つ、重箱の隅をつつくようなマニアックな知識というのは、AI(人工知能)で代替がききます。というか、AIには勝てません。もはや、膨大な法律や判例を暗記する必要はなく、そういうものが存在することを理解し、それらをどう組み合わせて応用するか、ということが問われるわけです。これはまさに、実務経験というわけです。

欧米をはじめとするグローバル社会を見ていると、「AIによって、仕事が奪われる!!」的な危機感は、日本ほど強くない。その理由は、AIが得意とする知識よりも、人間に求められる経験を重視するからです。
 

欧米の人というのは、ビジネスや学問における、重箱の隅をつつくようなマニアックな知識を、ほとんど覚えていない。つうか、覚える気もない。複雑な暗算も得意ではない。つうか、やる気がない。なぜか? それは、人間がやるべきことではない、と考えているからです。AI時代を見越してそうしていたかどうかは別として、時代はその発想を支持しています。われわれ日本人も、各種資格や入試の要件、そもそも “優秀であること”をいかにして測るのか、について、真剣に考え直す時期に来ているように思います。

有名な外資系企業で、何をしたか・・・?!


さて、外資系企業が最も評価する資格に話を戻しましょう。私の経験上、外資における無敵の資格、それは、

 

好業績グローバル企業内に設けられたエキスパート養成プログラムでの経験

 

です。長っ! わかりにくいと思いますので、少しご説明しましょう。

 

たとえば、外資においてマーケティング分野で最も高い評価を受ける人は、

「P&Gでマーケティングの経験があって、かつ、P&G社内のマーケッター養成プログラムを受講した人」

です。これ、無敵。この経験があれば、どんな外資でも、相当な高額でオファーを出すと思います。

 

人事なら、

「グーグルの人事部門に在籍して、かつ、グーグル社内のHRエキスパート養成プログラムを受講した人」

経営人材なら、

「GEでリーダー経験があって、かつ、GE社内のリーダーシップ養成プログラムを受講した人」

・・・なんてのが、無敵の評価を受けます。

 

「そりゃ、そうだろ・・・」って話なんですが、私がここでお伝えしたいのは、

 

基本的な知識をベースに、実務経験をコアとして、スキルを体系化していく

 

ということ。これができている人が一番強い! 外資にとっては、こういう人が、喉から手が出るほど欲しい! ということなんですよね。

 

資格というのは、何かを実現・遂行する上での、一要素にすぎません。資格を取って終わりではなくて、取ってからどうするかの方がはるかに重要なのだと思います。来るべきAIの時代、「こんなはずじゃなかった・・・」とならないように、自分の将来像を見据えた資格取得のプランを立て、頑張ってくださいね。では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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