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有元美津世のGet Global!

外資・グローバル転職で役立つ英語表現(9)- Reciprocity, Reciprocal2022.02.15


 鎖国を続ける日本に対する批判は、日増しに高まる一方で、やっと日本政府も入国制限を緩和し、留学生やビジネス関係者の受け入れを再開するようです。海外とは縁のない一般人はさておき、政府関係者らも「日本の入国制限は世界的にも非常に厳しい」というのを理解し始めたようです。アメリカの大学が、いつ入国できるかわからない日本への留学生派遣をやめることなど、やっと日本メディアでも報じられるようになったのも一因でしょうか。(いつも「海外では~」と騒ぐくせに。)

 日本の入国制限はG7国では群を抜いて厳しく、OECD諸国でも、日本より厳しいのはニュージーランドくらいです。しかし、そのニュージーランドは、少なくとも開国スケジュールを公開しています。今月やっと、オーストラリアからの居住者や一部の労働者の入国を許可し、3月には他国からの一部の労働者やワーホリビザ保持者、4月からは留学生や労働ビザ保持者、7月にはビザ免除国からの観光客が入国できる予定です。(ワクチン接種者は、入国後は自主隔離のみ。)

 日本政府は、そうしたスケジュールを示しておらず、2020年から日本への入国を待ち続けている留学生15万人近くは、今後の計画の立てようがないのです。20歳前後の二年というのは、人生をも左右するような貴重な時間であり、「もう待てない」と韓国などに留学先を変える学生らもいます。「ずっと日本に憧れていたのに、日本に裏切られた」という日本ファンもおり、「日本の”ソフトパワー”を損ねる結果になる」という海外メディアもありますが、その通りだと思います。

 なお、この”留学生”には研究者も含まれており、研究分野によっては、日本国内で研究者が不足するという事態も起こっています。

 外資系企業では、新たな人員が海外から入国できないため人員を交替させることもできない状態が続いています。これでは、アジアの拠点を日本以外に置こうという”日本飛ばし”が加速するばかりです(香港が選択肢から外れてしまったのは日本にとっては不幸中の幸いですが。)日本国民は、常々、日本の国際競争力の低下を政府のせいにしようとしますが、結局、内向き、後ろ向きな自分たちの思考が、こうした事態を招いているという自覚はないですね。(閉ざされた日本語オンリーの世界に浸かっているから、世界の情勢を把握できていないのも一因。)

Reciprocity


  今年に入り、アメリカに留学していた大阪の私立大の大学生が、帰国時の検査でコロナ陽性になったことがニュースになっていましたが、「海外からの(自国民の)入国をもっと厳しくしろ」という声は聞かれても、「アメリカからの留学生は日本に入国できないのに、日本の大学生は、普通にアメリカに留学できている」というアンフェアな事実に思いを巡らす人など少数派なのでしょう。
 大阪の国立大学では、昨年から300人ほどの日本人留学生を送り出しているにもかかわらず、留学生は一人も受け入れていません(受け入れたくても国がビザを発行しない)。そのため、アメリカの大学からは、今春には同校には留学生を送らないということです。すでに、「こちらの学生を受け入れないのなら、日本からの留学生も受け入れない」という海外の大学も出てきています。交換留学制度というのは、相互の大学が同じ人数の留学生を受け入れ、受け入れ校では授業料は免除されるというものです。ですから、一方通行というのは、「交換」「相互主義」の原則に反するものであり、受け入れを拒否されるのは当然のことです。
 こうした一方通行の状態は、英語では”lack of reciprocity”(相互主義の欠如)と表現できます。”Reciprocity”とは、外交や通商において、相手国の自国に対する待遇と同等の待遇を相手国にも与える「相互主義」のことです。

Student Exchange programs operate on the principle of fair exchange or reciprocity.
(交換留学制度は、公平な交換、相互主義の原則に沿って運営される。)

Russia says it will respond to new US sanctions based on the principle of reciprocity.
(ロシアは、相互主義に基づいて、新たなアメリカの制裁に対応するということだ。)

Overseas universities are frustrated with Japan’s lack of reciprocity.
(海外の大学は、日本側の相互主義の欠如に苛立っている。)

Reciprocal, Reciprocate


 たとえば、入国時のビザ免除ですが、これは「相互査証免除協定」などと呼ばれます。英語では、形容詞の”reciprocal”が使われます。

The visa-waiver program is a reciprocal agreement made between Japan and other countries.
(査証免除プログラムは、日本と他国の間で結ばれた相互協定である。)

Japanese passport holders are allowed to travel visa free to the country, as part of a reciprocal agreement between the two nations.
(日本のパスポート保有者は、二カ国間の相互協定の一環として、その国にビザなしで旅行できる。)

 なお、動詞は”reciprocate”(報いる、返礼する)ですが、堅苦しい言葉なので、日常会話ではあまり使われません。

Japanese nationals have been able to enter many countries, but Japan is not reciprocating.
(日本国籍者は、多くの国に入国できるが、日本は、それに報いていない。)

They never reciprocated the favor.
(彼らが、好意に返礼することはなかった。)

We reciprocated their hospitality by inviting them to our home.
(彼らのおもてなしにお返しするために、自宅に招待した。)

 インドに行ったときに、(インドを植民地にしていた)イギリス人やアメリカ人が、面倒なインドの入国手続きに対し、”This is just a game they play”(弄んでいるだけ、なぶりものにしてるだけ)と怒っていましたが、彼らはインド人がイギリスやアメリカに入国するのが、どれほど大変か、reciprocityに対し、微塵の理解もないようです。
 また、アメリカのパスポートは、日本のパスポートに比べ、入国にビザを必要とされる国が多いのですが、ビザは必要でなくても、アメリカのパスポートに対し”reciprocity fee”(相手国が徴収するなら自国も徴収する査証代のようなもの)を徴収する国が結構あります。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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