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外資・グローバル転職で役立つ英語表現(43)-- Gender Neutral2023.06.20

 

  前回、性別を特定しない”gender neutral”の代名詞について書きましたが、今回は、他のgender neutralの表現を紹介したいと思います。

  2020年に日本航空が機内での案内で、”Ladies and gentlemen”という呼びかけをやめ、”Everyone”を使うことになりましたが、これもXジェンダー(nonbinary)の人に向けた配慮です。

  元々、gender neutralの表現が普及し始めたのは、フェミニズムの台頭によるもので、日本でも 男女雇用機会均等法の施行を機に「看護師」のようにgender neutralの職業の呼称が生まれました。

 

Sir/Ma’am

 

  英語では、顧客に店員などが呼び掛けたり、知らない人に対する敬称として、女性であれば”ma’am”(madameの略)、男性であれば”sir”が使われることがあります。これも見かけに基づいて行うと、ジェンダー・アイデンティティ(gender identity)が女性の人に”sir”で呼びかけるといった事態が起こります。(※1)

  若い女性(または自分より若く見える女性)に対しては”miss”が使われることが多く、私も40くらいまで”miss”で呼ばれていたのが、”ma’am”に変わった時点で「年齢が顔に見えるようになったか...」と思った次第です。(と考えるのは私だけでなく、”ma’am”を嫌うアメリカ人女性は多く、若い世代にとっては一世代前の呼称です。)(※2)

  ”Miss/Mrs.”と同じで、女性だけが年齢や未婚・既婚で呼称が変わるというのはsexismの表れです。”Miss/Mrs.”に変わる”Ms.”は世界的にもかなり浸透していますが、”ma’am”に変わる呼称は普及していません。(※3)なお、Xジェンダーの人向けの敬称として"Mx"が登場しています。

  Xジェンダー(nonbinary)への配慮も求められる今、知らない人に呼び掛ける際は”Excuse me”や”Hello”が無難だと思います。

 

名前・肩書

 

  アメリカ南部では、”Yes, sir””Thank you, ma’am”のように”sir”や”ma’am”を文章の後につける習慣があります。また、アメリカの軍隊では、上官とのやりとりの際には、必ず”sir””ma’am”をつけるのがルール(military courtesy)でしたが、今では、海兵隊以外では、訓練教官に対しては”Yes, Sargent(+名前)”のように教官の階級を使うのがルールとなっています。

  米上院の公聴会で女性の(有名)議員が、男性の軍人に”ma’am”と呼びかけられた際に、「Ma’amでなくてsenator(上院議員)と言ってもらえませんか…。私は、非常に苦労して、この肩書を手に入れたんです」と発言して、アメリカ国内ではニュースになりました。

  それは14年前の話で、今では“Thank you, ma’am”でなく、”Thank you, senator”と言う方が適切なのです。

  なお、相手の名前がわかっている場合は、1)よりも2)のように名前で呼びかけるのがベストです。


1)Sir, you left your credit card on the table.
 (お客さま、テーブルにクレジットカードをお忘れです。)


2)Mr. Walters, you have a package.
(ウォルターズ様、お荷物が届いております。)

 

Actor

 

  日本でも、1986年の男女雇用機会均等法の施行をきっかけに、「スチュワーデス」が「客室乗務員(CA)」に、「助産婦」が「助産師」に、「保母・保父」も「保育士」に変わりました。同様に、英語では、”cameraman”が”photographer”に、”fireman”が”firefighter”、”policeman”が”police officer”になりました。

  ”Waiter/waitress”も、”waiter”は男女両方に使えますし、”server”を使えば性別を気にする必要はありません。日本では、高級店以外では、飲食店で「自分が担当するテーブル」というのが決まっていない場合が多いですが、決まっていれば、下記のように挨拶することができます。


Good evening. I’m your server for the night.
(こんばんは。今夜は私が担当させていただきます。)


  下記は、席への案内係(hostess/host)がよく言うセリフです。


A server will be right with you.
(給仕係が、すぐに参ります。)


  ”Waiter”と同様に、”actor”も男女どちらにも使えます。ジョディ・フォスターが自分のことを”actor”と呼んだのは20年以上前のことですが、未だに「女優・女性の俳優」は、英語では”actress”でないといけないと思っている日本人は多いですね。


She is a great actor.
(彼女は、すばらしい俳優です。)


  映画・TVの賞などでは、「主演・助演男優賞」に対する「主演・助演女優賞」であれば、actressも使われていますが、こうした賞でも男女別(gendered categories)をやめるのが、ここ数年の流れです。(そもそも監督や裏方の賞では性別で分かれていないのに、俳優だけ分ける必要とは?)

  MTV Movie & TV Awardsでは、2017年から男女別の賞は廃止され、”Best Performance”(最優秀演技)に統合されています。 ベルリン映画祭でも、2020年に男優・女優賞が廃止され、「主演俳優賞」「助演俳優賞」(Best Leading and Supporting Performance) 」となりました。

  一方、2023年の演技界のトニー賞では、Xジェンダー(nonbinary)の俳優が二人ノミネートされたものの、Xジェンダーのカテゴリーはないため、二人とも「俳優」という意味で”actor”のカテゴリーを選ばざるを得ませんでした。しかし、「自分にふさわしいカテゴリーがない」ということで参加を辞退した俳優もいます。TV界のエミー賞でも、同様のことが起こりました。

  日本でも、女性にも「俳優」を使うことが増えていますが、「違和感しかない」という声が聞かれます。(※4)世界的なgender neutral の流れを止めることはできないと思いますので、とくに海外とのやり取りでは配慮せざるを得ないでしょう。



(※1) 先週、成立したLGBT法案で、「自認性」「性同一性」は「ジェンダー・アイデンティティ(gender identity)」に統一。

(※2) 先週、アメリカのジムで、私に続いて出てくるカップルのためにドアを押さえていたら、男性に”Thank you, sir.”と言われた! 私はスカートを履いていたのだが… 思わず言い慣れている”sir”が出てしまったのだろうか。

(※3) 先日、ウズベキスタン航空で予約したら、生年月日に基づいてか勝手にMrs.をつけられたが、新興国では、今もMs.が選べない航空会社あり。

(※4) 日本の場合、いつからか「男優=AV男優」の意味合いがもたれるようになったのも一因のようだが、私には「俳優と女優」という並列でない表現の方が、ずっと違和感アリ。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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