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鈴木美加子のグローバル人材塾

外資系勤務でストレスになりそうなこと2022.06.21

 

元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。

今回のテーマは外資系に働く上でストレスになりそうなことです。100%完璧と言う職場はありえず、外資系で感じがちなストレスはもちろん存在しますので、どんな内容なのかを解説します。

 

1. 最終決定権が日本法人にない

 

最終決定権が日本法人にない事は、外資に共通するデメリットです。マネージャー以上のポジションになると、本社の意向と日本法人の間に挟まれる可能性が出てきます。

例えば、マーケティングでリサーチの仕事をしているとします。日本のお客様のニーズを調査し、どのような製品を開発するのが良いかは分かりました。これを本社にそのまま報告したとして、製品開発が実現するかどうかは本社次第です。 本社は世界市場を俯瞰しており、コスト・パフォーマンス高く、なるべく多くの国で競争できる製品を開発したいと考えています。日本と言う狭い、しかも少しずつ地盤沈下している市場向けに、コストをかけて製品を開発すべきかどうかを本社で議論した末に、製品開発ができないこともあり得ます。

日本法人の社員には「理不尽」に感じられますが、最後に決めるのは本社なのでいたし方ないのです。

 

2. 自己アピール力のある人が出世しやすい

 

外資系では、表現力が高い、英語ができる、自分を上層部に実力以上に見せられる人が、昇進しやすい傾向にあります。外資の文化は謙譲の美徳というよりは、アサーティブネスをよしとするので、真面目で着実で地味なタイプは少し損をします。外資に移ったら、ここぞという時には自分をPRできる力が重要です。

1年間の業績評価が行われるまでに、自分の実力を見せるチャンスは複数回あるので、自分の得意分野を磨きチャンスが来たらお披露目できるよう努力しておくことが成功の鍵です。自分のことを大きく見せるのが苦手なタイプは、例えばお客さんに褒めてもらったメールを上司に転送するなど工夫が大切です。

 

3. 離職率が高く、担当が変わりやすい

 

外資系企業には、一生その会社に勤めるつもりはない社員が多いです。現時点の上司、同僚、部下が1年後も同じ職場にいるかはわかりません。この事実は、目の前に人間関係のトラブルがもしあったとしても、当事者双方のどちらかがいずれ転職するかもしれないことを意味し、精神的に少し楽な状況を生みます。

とは言え担当者が変わるたびに引き継ぎがうまくされないことが多く、日本企業のように2ヵ月も3ヵ月もかけてお客様の好みまで引き継ぎをする場合とは、異なるストレスが発生する可能性はあります。例えば、これまでの取引に関する経緯がわからず、お客様との関係をゼロから築くことになることもありえるのです。

 

4. Matrix Reporting(マトリックス・レポーティング)の複雑さ

 

マトリックス・レポーティングとは、外資系のマネージャー以上ぐらいになると、上司2人にレポートすることになる状態を指します。

例えば私の例ですと、人事部の責任者として、実線でアジア・パシフィックの人事のヘッドにレポートし、点線で日本法人の社長にレポートしていました。実線の上司が優先されますが、かといって点線の上司をないがしろにするわけにはいきません。通常は同じことを2人の上司に報告すればいいだけのことですが、2人の方向性にズレがある場合は、挟まれてなかなか大変な思いをすることになります。

 

5. 本社及び本社からの駐在員に対する説明責任

 

マーケティング責任者の友人が、転職するたびに本社に対して根気よく説明しなければいけないことを教えてくれました。それは、日本市場が製品に完璧さを求めることと、広告で使う色やビジュアルでの好みが欧米とは大きく違うことだそうです。 特に色やビジュアルの好みは、英語で説明するのが非常に難しい感性の世界ですし、本社で使用できるビジュアルが決まっていることも多く、説明しても通らないことも多く大変だそうです。

同じことが、本社から派遣されてくる駐在員(エキスパート)に対しても当てはまります。彼らにとって初めての日本赴任で、3年くらいの赴任期間に最大限のパフォーマンスをあげて本社に戻ろうと考えています。彼らに対して、日本の事情を詳しく説明することになります。いちど説明しても駐在員が交代すれば、また白紙の状態から説明することになります。

外資系社員の役割には、本社と日本法人の架け橋になることも暗黙のうちに含まれているので、仕方ないのですがエネルギーを使う作業です。

 

6. 休暇の間、誰が仕事をするか

 

外資系企業の有給休暇の取得率は日本企業よりも高いので、休みは取りやすいです。

休みが長く取れる傾向は海外(本社もしくは他の現地法人)の方が顕著です。夏休みであれば、2週間は当然、もしかしたら1ヵ月ぐらいの休暇を取る国もあります。前もって言ってくれれば良いのですが、突然休暇に入り誰も状況を把握できていないので、プロジェクトが止まりそうになるリスクもあります。 外資に勤めているときは、誰がいつ長い休暇を取るのかをプロジェクトマネージャーはしっかり把握しておき、必要なデータがどこにあるのか、誰をバックアップ要員にするのか考えておく必要があります。


今回は、外資系企業に勤める時にストレスになるかもしれない項目について解説しました。個人主義でワーク・ライフ・バランスが取りやすいなど良い点が多い外資系企業ですが、本社が海外にある事によって起きるトラブルや抱えるストレスもあることを理解して、転職に備えてください。

 

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この記事の筆者

鈴木美加子
グローバル・キャリア・カウンセラー /(株)AT Globe 代表取締役

日本GEに入社して人事のキャリアをスタートさせ、モルガン・スタンレーなどを経て、日本DHL人事本部長を務める。帰国子女でも海外赴任経験者でもないが、TOEIC960点をマークし外資系企業でキャリアアップした経験を元に、個人のキャリアアップを支援している。2011年から18か月、オーストラリアに居住し、海外勤務・海外からの帰国希望者のキャリア相談にも乗ることができる。
個人向けのキャリア相談の他、企業向けに、リーダーシップ研修、チームビルディング、組織分析、異文化マネジメント、グローバルコミュニケーション研修を行っている。ルミナスパーク、ルミナリーダー公認講師、ホフステード異文化モデル公認講師、STAR面接法・認定講師

株式会社AT Globe http://atglobe.jp/

強みを最大限に活かし、個の力を発揮出来る人材を一人でも増やすことで、母国を元気にすることをミッションとする。ルミナというアセスメント・ツールを使い、個人・法人向けの人材育成事業を行う。

 

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